憲法主義 ~南野森/内山奈月
この本の良いところは、そもそも憲法とはどういったものなのかという根本的な疑問に答えてくれること、そして説明が論理的で理解しやすい点です。私の表現力が足りないばかりに、よくある褒め言葉に収まってしまうのが非常に悔しいのですが、読後「この人の講義を受けてみたい」と思わせられた稀有な一冊です。
本書は講義形式で話が進みますが、受講生役であるAKB48の内山奈月さんにも要注目。憲法の全条文を暗誦していることはもちろん、時に南野先生を唸らせる鋭い受け答えはアイドル物で想像しがちな緩さとは無縁で、本書の面白さの一翼を担っていることは間違いありません。AKBには詳しくないのですが、自分に投票権があるなら彼女に1票入れたいな、と思いました(笑)
憲法は誰が守るもの?
―――(略)では、憲法は誰を対象にしてるの?
内山:その国の国民。
―――ではないのです。
内山:えっ?
―――答えから言うと、憲法は国家権力を対象としています。(P98~99より抜粋)
えっ?
憲法を守らなくてはいけないのは国家の方で、
自分たちの自由やら権利やらを国家に守らせているのが憲法ってこと!?
憲法は法律のお仲間、くらいの認識だった私が受けた衝撃の大きさと言ったら。憲法というのは私達のもので、私達を守ってくれているものだったんだ、と初めて思えました。憲法が権力を縛るためのものだったなんて、公民で習ったかな…?(手元にある中学公民の問題集には書いてありませんでした)
憲法がわかれば政治がわかる
本書は以下のように興味をひく題材が目白押しで、政治や憲法の基礎を学びたい方にピッタリです。
・日本国憲法はなぜ改正しにくいのか
・違憲審査制は正当化できるのか
・国民の義務は3つでいいのか
・国民主権は嘘である?
・普通選挙は正しいのか
・当然の1項、異常な2項?(憲法9条について)
他にも集団的自衛権についてや、「恋愛禁止は憲法違反か」など本書ならではの考察から憲法の本質に迫っています。筆者の考えも示してありますが、押し付け感はありません。説明は中立であると感じました。
ニュース検定対策のオススメ度は☆5(☆5で最高点)。憲法絡みの設問は多く、ある程度意味を理解していないと解けない問題もあります。国会の議論は憲法と密接に関わっていますから、憲法がわかれば政治がわかると言っても過言ではありません。読みやすさ、重要度、共にMAXです。
本書を読んで一番良かったことは、憲法について自分なりの考えを持てたことです。憲法改正が現実味を帯びてきた今日、検定云々抜きで広く読んでいただきたい一冊です。