世界の経済ニュースがまるごとわかる本 ~丹羽由一監修
この本の優れた点は「景気が良い」とはどのような状態かを一番最初に説明していることです。
たったこれだけのことですが、たったこれだけを説明してあるだけで「なるほど、この状態を作るためにこんな政策をしているのか!」と後の説明がわかるようになるのです。本書では「景気が良い」といえる状態を次のようにまとめています。
・人々がたくさんお金を使い
・企業がたくさん投資して
・労働者の賃金が上がり
・失業者が少なくなり
・企業がたくさん製品を作り
・物価が毎年適度に上がる
と、いう状態になれば、景気は良くなるはず、と考えられるわけです。(P8より)
政府や日銀が行っている政策も、上記のような状態を目指してやっているという目で見ると…どうでしょう、なるほど、と思いませんか?最初に景気が良い状態の定義を示し、次にどうすれば景気が良い状態になるかを説明し、最後に実際の政策の中身を解き明かす。目指しているゴールが明確なので、政策の意図がよくわかります。
説明が丁寧な入門書は他にもありますが、どうも腑に落ちないなと感じていた私にとって、ブレイクスルーとなる一冊になりました。
わかる経済用語
もし次の中から「これが知りたかった!」というものがあれば、本書は買いです。
・GDPがよく分からない どう計算してるの?
・アベノミクスは何をやっているの?
・ゼロ金利政策とマイナス金利政策の違いは?
・量的緩和、質的緩和ってなに?
・国債の利回りがマイナスってどういうこと?
ニュース検定でも必須の用語が分かりやすく説明してあります。
面白いなと思ったのは国債の説明の冒頭で「もし、あなたが100億円持っていたら」と仮定する話。
100億円を1万円札で用意すると、横1.9m、縦1.6m、高さ40センチ、約1トンの紙の固まりになります。(P52より)
タンス預金は無理、泥棒や火事も心配、普通預金は保証が1000万まで、当座預金は利子がつかない、株やFX、社債はリスクも大きい…国債は?国が破綻しない限り安全で、利子もつき、途中で売ることだってできる。うん、国債が銀行やお金持ちに好かれる理由がわかる(笑)
国債のメリットは知ってはいたのですが、実感として「そうだよな」と思えるところに説明の上手さを感じます。
ニュース検定対策のオススメ度は☆5(☆5で最高点)。本書は総じて説明が分かりやすく、以前より経済のニュースが理解できるようになりました。今年(2018)に入って起こったトルコやアルゼンチンの通貨下落と、アメリカの利上げの関係がスッとわかったのも本書のおかげです。
欠点としては、世界経済の重大ニュース(リーマンショックやユーロ危機など)についての説明が触れる程度であること。この辺りを詳しく知りたい方は別の本で補うことをオススメします。
最初は本の薄さと安さを頼りなく感じましたが、最後には頼りがいのある一冊となりました。
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